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岸野みさを書評140404

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柏倉 朝子・著「感謝 百首」を読んで

 
岸野 みさを
 
 
「感謝 百首」にありがとう

感謝百首の見事なタイトルとそれを表現している装丁で、著者の柏倉朝子様とデザイナーの高砂薫様のほんのりとした暖かさが一目で伝わってきました。

どの句も「歌詠むは吾が想いを子や孫に 伝うためにぞ天に頼りて」の如くに著者の一心な気持ちが真っ直ぐに詠われています。僭越ながら、あえて私好みの10句をピックアップさせて頂きました。

宗教のかなめ石なるモルモン書 長く書き継がれ吾に届きぬ
同感です。確かに3000年もの時を経てこの「秤の上のちり」(イザヤ40:15)のような存在の自分にまで届いた神の御言葉を不思議な御業と思い、また感謝の気持ちで一杯になります。

やりのこす家族歴史の探求を 再び始めかえる喜び
ローマ字表記からからカタカナ表記、ハワイ神殿、ソルトレーク神殿、東京神殿、PAFからFamily Treeと遍歴する先祖たちの記録に著者のように喜びを見いだせず、「儀式は済んでいるのに」と困惑している自分は不遜でした。

若き君オリバーのように爽やかに 人に好かれて皆と仲良く
妻であるのに母のように夫を見つめる視線が眩しいですね。
確かに柏倉仁兄弟は当時のYWMIAの女性達の中では「日本のジョセフ・スミス」と言われて慕われていました。
奥様はどのような女性でしょうか?と関心が集まり、その夫唱婦随の姿に納得したものです。
柏倉兄弟からは指導者としての多くのメッセージを聴くことが出来ました。中でも忘れられないものがあります。それは東京神殿第2代目の故アドニー・Y・小松神殿長時代のことです。(1982-1985)「今何時だと思っているのですか?」と柏倉兄弟が電話口で言ったその相手はなんと小松神殿長でした。神殿参入者が少なくて、どうすればいいのかという電話で、その相談は一回や二回ではなく、しかも夜遅くの出来事だったそうです。柏倉兄弟がいかに小松神殿長から信頼されていたかがよく分かり、それを聞いた聴衆は神殿に参入しようと悔い改めました。

ヨコハマの街空小さくも輝きぬ まぶしく見上ぐ娘生まれて
初めて母となって見上げた空の輝きは、格別で美しかったことでしょう。同じような思いを母の皆さんも共有することができるでしょう。

松坂の肉を送ると息子の電話 物より声が吾は嬉しき
倍返しされたということでしょうか。息子さんの元気な声と高級品の贈物。さぞかし松坂牛も美味だったことでしょう。

せみ時雨娘の初子に降り注ぎ 孫の湯浴みは最初で最後
たとえ一回だったとしてもその経験はかけがえのない大切な思い出となって、湯浴以上の愛情の中に深く流れていると思います。でも、もっと両手で抱きしめたり面倒をみたりできたなら、という母性愛の悲しみも読む者の胸に迫ってきます。

神の愛信じる人は 皆決して 夫婦別れをするはずはなし
本当に「筈はない」のに人の世の儚さと人の選択の自由の前に、それもありなのかと思うようになりました。「離婚した方が幸せになれる」というほどの事態に直面したことが無い自分には到底理解できないことです。

広島へ身代わりとなりし人達を 夫と悼みて時を経て問う
「問う」これは世界で唯一の被爆国の国民として忘れてはならない大切なことだと思います。「原爆は仕方がない」と言った国会議員がいましたが…。米軍の日本への原爆「リトルボーイ」投下候補地は広島、京都 、小倉、新潟の4都市だったと伝えられています。もし新潟市だったら私は今ここにこうしていることはできません。糸魚川市のすぐ隣の長野県に住んでいました。
青木書店発行の「詩集 原子雲の下より」に収録されている小学3年 坂本はつみ様の詩をここに記載します。

げんしばくだん
げんしばくだんがおちると
ひるがよるになって
人はおばけになる

車椅子押す背に光る芝桜 娘と写る旅のスナップ
幸せと喜びに溢れた親子の再会のひと時は芝桜が光っているように輝いています。

雲去りて遠き日と同じ沼にいる 嗚呼祝福と感謝の日なり
裏磐梯高原の五色沼でボートを漕いだのですか。新婚のうら若き日のお二人の姿が眼に浮かびます。共に歩んでこられた祝福を想い感謝の気持ちが美しい湖沼に映えて見えます。
私も行ったことがありますが、エメラルドグリーンやコバルトブルーに輝く水面は神秘的で、水中の微粒子が大きいと光のスペクトル(分光分布)が含まれていると聞きました。
 
 

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今年で改宗50年と伺いました。私も同じで同期生ということになりますね。ステークが異なると交流がありませんので朝子姉妹の病の時も何もできなくて申し訳ございませんでした。もう何十年もお会いしていませんので私の心の中では若い頃のお二人の姿のままでいます。これもまたいいものですね。
今回「感謝 百首」をお贈りいただきこのような機会に恵まれて大変嬉しく存じます。
ありがとうございました。

朝子姉妹に捧げる俳句を一句創りました。

愛おしき娘とそよぐ春の風

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