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2013.06.29 読書感想文「アルマ・O・テーラーのモルモン経翻訳について学ぶ」
投稿者:岸野みさを

アルマ・O・テーラーのモルモン経翻訳について学ぶ 

岸野 みさを

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 2009年は日本語のモルモン書が出版されて100年の記念の年で、リアホナにはアルマ・O・テーラーの「モルモン書翻訳日記」が連載されました。
 表題について、偉大な先達の受け継ぎである「日本末日聖徒史」(ウイリアム・マッキンタイヤ/高木信二著)を拝読し学んだことをまとめてみました。

 1901年日本に渡来した最初の4人の宣教師の1人で最年少18歳のアルマ・O・テーラーは翻訳の責任が与えられたとき、「恐れを感じ崩れそうになり、今まで知ることのなかった自分の弱さを痛感した」と記しています。
 神の助けなしに翻訳を成し遂げることができないことを分かっていた彼は日記に切実な祈りを残しています。
 「モルモン書の純粋さが、どのような方法でも失われることがなく、明快さがどのような方法でも曇ることがなく、モルモン書に常に見いだすことのできる御霊と証が、どのような方法でも損なわれることがないように」と祈りました。

 ルイス・A・ケルチ45歳はそれ以前に10年間本国で専任宣教師として働いていましたが日本に来て1年で、ヒーバー・J・グラント会長は2年で日本伝道部から解任されました。難解な日本語が解任の原因になったということです。

 アルマ・O・テーラーはその難解な日本語に果敢に挑み前人未到の大事業に取り組みました。
 まず英語の1節を2回読み、それを日本語に訳してローマ字で書きとめ、それを5回読み、今度はローマ字を邦字に直して7回読み、と苦闘が続きます。

 23歳になり伝道部長に召されたアルマ・O・テーラーは翻訳に時間を取れなくなって、フレッド・A・ケインを補佐に召しローマ字を邦字に直す作業を割り当て、2人はさらにそれを注意深く読み返して原文と照らし合わせました。
 1年9ヶ月かかって終わるのですがアルマ・O・テーラーの日本語能力が増し加わったことによって、改訂の必要を感じ大掛かりな改訂作業に取り掛かりました。それは改訂とはいえないほど最初の翻訳文の原型をとどめてはいなかったと記されています。

 また3年間の働きが水泡と化すのではないかと思われる問題がもちあがりました。アルマ・O・テーラーは口語体で文章を書きましたが、評価を依頼して第Ⅰニーファイ第1章のサンプルを渡した仙台の宣教師達のよき理解者であり「江北新報」の編集者である鈴木原太と言語学者の平井金三に紹介された野口善四郎はそれを文語体に直して書いてきたのです。

 直した理由は翻訳文に聖典としての力と威厳をもたせようと努力したがうまくいかず、文体を文語体に変えたということでした。文語体に関して特別な勉強をしていなかったアルマ・O・テーラーは有能な日本人にこの仕事を託すことにしました。

 大学教授で言語学者の平井金三に依頼しましたが引き受けてもらえず弟の大学教授の平井廣五郎(ひろごろう)に託すことになりました。彼は第3ニーファイ第3章まで校閲と訂正を終えていたのに女性問題で契約は解消されました。

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 生田長江はアルマ・O・テーラーが探し求めていた高潔な人物で、素直に自分の間違いを認め、またどんな質問にも敬意をはらって答えた紳士であると記録してあります。生田長江は後に大正時代の文壇の第一人者であり翻訳家文筆家として人々に多大な貢献をしました。生田長江は平井廣五郎の文語体を大幅に変更することはありませんでしたが、何百という箇所の疑問についてアルマ・O・テーラーは注意深く話し合いと相談を繰り返し、ひとつの疑問も残らないように解決しました。

 最後の付箋がくず入れに投げ込まれた日は1909年7月24日アルマ・O・テーラーがユタを出発した日から調度8年目のその日に原稿は遂に完成しました。

 彼は「聖文の理解と翻訳に苦しんでいるとき、しばしば実際にモルモン書の預言者たちの口から出る言葉を直接聞いていると感じた」と証しています。「えっ?それって日本語で話したということですか?」

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 こうしてこの国の扉は「選ばれし者たち」の心血を注いだ信仰と献身によって開かれたのです。
この尊い「受け継ぎ」に対してヒンクレー大管長は度々「誠実であって下さい」と繰り返されました。

 友人で収集家のY氏からアルマ・O・テーラーの翻訳した「モルモン経」を譲り受けました。以下にあるものがそれです。

 「又此記録を受くる時、そが眞なる物や否やをキリストの御名に託て永遠の天父なる神に問へ。若し誠心誠意に且つキリストを信じながら問はば神は聖霊の力に由りて此の記録の確實なることを汝等に示し給ふべし。(モロナイ10:4)

  • 連日、雑事に追われている私には、こういう裏面史といいますか、
    表舞台には出てこなくなった先人のご苦労が、こうして
    サイトに公開されるようになったのは、貴重なことだと思います。
    いつか、徐々に人目に触れて啓発する記事になると思います。
    いつも貴重な情報を有難うございます。 -- 昼寝ネコ 2013-06-29 (土) 17:10:26

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