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14062101徳沢愛子

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2014.06.21 エッセイ「伏兵のように」投稿者:徳沢愛子

Peter Iljitsch Tschaikowski - Romance (James Last)

伏兵のように                     
 
徳沢 愛子
 
 
 私の初恋は中学3年の時。私と同じクラス。野球部の投手である。その上勉強は出来るしイケメンでもあったから、ライバルはいっぱいいた。学級委員同士の彼と私。話し合うことがあっても、目を見て話すことはできなかった。私はすぐまっ赤になったからである。まっ赤になって身も心も消え入りたいという思いを何度したことか。
 
 その彼が毎朝、私の家の前を通って学校へ行くのである。私は決まったその時刻に二階に上がり、小屋根に出てうつ伏せになる。待つ。朝陽を浴びて詰襟姿の彼が凛凛しく近づいてくる。頭を少し上げる。みつめる。心臓が動悸を打つ。ああ、何とかっこいいんだろ。彼と私だけの秘密の時間。無理な姿勢も何のその。顔も赤くならず、朝風に吹かれて彼としみじみ対い合える。何という素敵な時間。伏兵のように狙い定めても、初恋の矢は彼を貫くことはなかったが、私には黄金のような眩しい時間であった。
 
 

  • 逆に言えば、いつまでも心に残る、生涯の佳き思い出となっているのでしょう。結局は現実的という共有がなかった訳ですから。もし私が、中学生の時の初恋相手とそのまま結婚していたら・・・と思うと、淡いほのかな思い出はどこにも存在しなかったように思います。 -- 昼寝ネコ 2014-06-21 (土) 12:50:00
  • 徳沢愛子姉妹
    かくして「黄金のような眩しい時間」は今でもそうして思い出の中で生き続け「永遠」になったのですね。 -- 岸野みさを 2014-06-21 (土) 14:16:14

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