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14072201あらら

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2014.07.22 創作短編・「ショートショート大人のメルヘン」(1)ハイヒールを履いた猫 投稿者:あらら
 
「ショートショート大人のメルヘン」
  (1)ハイヒールを履いた猫 
 
あらら

 たまにはハイヒールでも履いて出かけてみようかと思い、靴箱の奥にある赤いハイヒールを出して履いてみました。「でも、ちょっと派手だわ」それで青いハイヒールを履いてみました。「まあまあね」そう言って外に出ました。服はうすいピンクのスーツにしました。季節は新緑、もう初夏です。1年の半分近くが過ぎてしまいました。

 電車には乗らず、森に行って森林浴でもしようと思いました。新緑の緑が眩しいくらいです。ハイヒールではちょっと足元が危ないですが、何とかなるでしょう。車で秘密の森まで行き、駐車場から入口まで少し歩きました。長く履かなかったので、ハイヒールが足にピッタリしないのです。ついつい肩に力が入ってしまい、肩が凝ってしまいました。仕方がないから、ハイヒールを脱いで素足で歩くことにしました。大きな森の中に入ると、ひんやりした風が吹き抜けていきました。森を進んでいくと陽の光もとどきません。

 薄暗い所をやっと通り抜けると急に明るい所に出ました。そこにはたくさんの猫がいました。まるで猫の王国といった方がよいでしょう。キジとらのまだ若者らしい猫が近づいてきました。「ハイヒールをどうして履かないの?履かないなら僕におくれ」と、いきなり言われてちょっと戸惑いました。「あなたオス猫じゃない!ハイヒールなんて似合わないわ」近くで眠っている半分白で半分黒い猫はもう年よりです。目を開けるとこう言いました。「奴はずっとハイヒールを欲しがっていてね。でもこの国には靴屋がないから手に入らないのだよ」そう言うとまた眠ってしまいました。

 ちょうど3時のお茶の時間です。ここではコーヒーも紅茶もお茶も飲まないそうです。先祖代々守ってきたことだと言います。フリードリンクかハーブティーがお勧めだというので、一杯いただくことにしました。新緑の季節にピッタリのミントティーをいただくことに。リフレッシュしましょう。猫の王国といっても、ちゃんと人間用のテーブルと椅子が用意されています。ここは戦争もない平和な国だということです。ちゃんと平和憲法が守られているんです。いいですね。お茶をいただきながらお喋りをしてしまいました。

 脇に置いておいた青いハイヒールが、いつの間にかなくなっています。「あーら、あのキジとらの猫に盗られたのかしら?何てわんぱくなの」あたりを見まわすと、前足にハイヒールを履いたキジとらがいるではありませんか。聞くところによると、猫王国の王様の息子だとか。王様はお妃様をとても愛していたので、わざわざ特注で他国から青いハイヒールを取り寄せてプレゼントしたのだそうです。ところがそれがなくなってしまい、悲しみのあまり亡くなってしまったそうです。青いハイヒールを履いているキジとらがかわいそうに思えてきました。人間の大きなハイヒールは猫には似合いません。今度来るとき、猫に合う青いハイヒールを持って来てあげると約束しました。お茶のお礼を言って猫王国を後にしました。

 家に帰ると、みつばちマー君が飛んできて、猫王国が大変なことになっていると知らせてくれました。何でも平和憲法が破られ、若いオス猫は戦争に行かなければならなくなったというのです。王様の息子のキジとらも海外に出向くそうです。「まあ大変、早く青いハイヒールを作ってもらわなければ。どうしましょう。そうだ!マルティンの靴屋だわ」こういう時は、みつばちマー君に助けてもらうのが一番早道です。おじいさんの住んでいる所をみつばちマー君に教えてもらい、駆け足で会いに行きました。事情を話すと喜んで作ってくれました。早速キジとらに青いハイヒールを持って行ってあげました。キジとらは大喜びで、その青いハイヒールを履いて海外に出向いて行きました。もちろん、猫王国の自由の旗を持って指揮官としてですよ。

 みつばちマー君の話では、青いハイヒールはキジとらの足にピッタリ合って、敵国の猫よりもずっと大きく見えたので、有利に戦いに勝ったということです。でも、こう言っていたそうです。「何てことだ、戦争を二度としないと誓ったのに。沢山の仲間を失った。僕は平和憲法を守る」それから猫王国はずっとずっと平和が続いています。青いハイヒールがなくならない限り。
 「あ!私の猫がこんな所にいる」娘はお腹を抱えて笑ったのでした。あらら?
 
 
 

  • なかなかにご自分の世界ですね。創作は誰も投稿してくれませんでしたので、有難うございました。お礼申し上げます。私の稚拙な読解力のせいなのですが、最期の一文がどの猫を指しているのかが分かりませんでした。分からないところがまたいいのかもしれませんが、不眠の原因になるといけませんので、そっと教えてください。→「あ!私の猫がこんな所にいる」娘はお腹を抱えて笑ったのでした。 -- 昼寝ネコ 2014-07-22 (火) 17:34:57
  • あららさま
    森に入るのにうすいピンクのスーツに青いハイヒールを履いていく女性。誰もできない発想です。そりゃ、素足になってしまったことでしょう。ネコ王国の平和憲法と自由の旗、誰もできない発想です。でも青いハイヒールを前足だけに履いているネコなんてシャレていますね。しかもその高いハイヒールの御かげで敵猫を威嚇できたなんて、ハイヒールは背を高く見せるためにある、のだったのでしょうか?何十年もハイヒールを履かなくなった、それでも女性より。次回の(2)を楽しみにしています。 -- 岸野みさを 2014-07-22 (火) 19:57:20
  • 昼寝ネコさま
    娘が小説は長くて読めない、エッセイもだめというので、短編を娘のために創ったのです。娘が飼っている猫がキジトラのオス猫でわんぱくなんです。娘が喜んだので、発した言葉をそのまま入れてあげました。気を良くして10篇は書くと言ってしまいました。内々のものですが、手書き原稿より掲載されたのを読むのを楽しみにしているようです。 -- あらら 2014-07-22 (火) 20:40:34
  • 岸野みさをさま
    早速のコメントありがとうございます。ハイヒールを履いて背筋をピントして歩いてみたい、私の憧れから始まったのでした。ハイヒールはなんで履くのでしょう。ばかの大足で履けるハイヒールはとうとう見つからず、履いたことがないんです。猫の出てくる話をと頼まれて、母娘二人童心にかえって久しぶりに笑いました。恥は書き捨て(?)です。 -- あらら 2014-07-22 (火) 21:20:37

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