14072502岸野みさを
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2014.07.25 自分史・家族史「The Winds of Godと高畑洋介」 投稿者:岸野 みさを
The Winds of God と高畑洋介
岸野みさを
今井雅之氏著の作品を劇団青芸の一般公開で観に行った。娘のありさの夫高畑洋介が主役なのだ。
この作品は平成3年度(1991年)文化庁主催芸術祭賞、原作、脚本、演技、と史上初三賞を今井雅之氏が受賞した優れた作品である。平成5年(1993年)には国際連合作家協会芸術賞を受賞している。
丸山幹夫家4人、原謙ご夫妻、藤澤とし子さんとまどかちゃん、久保田さん、岸野家3人とありさと1歳の長男旦(あさひ)と観に行った。
高畑洋介の目の覚めるような演技に惹きつけられた。かん高い少年のような声、無駄のないキビキビとした身のこなし、入魂の表情。福田康子さんが「いい芝居でしたねえ。いい役でしたねえ。」と終わってから言われたが、その通り、松島少尉の役は特攻の典型で高畑にピッタリだった。
松島少尉は、故郷の愛する者と別れ、信仰の故に暴力にさらされ、聖書を踏まされるシーンには衝撃が走った。自分の信じているもの、心の支えとなり、救いとなっているキリスト教を捨てる場面である。
正面の観客席に向かって、それはまるで突撃のように、全身全霊で聖書を踏みつけ、棒のようになって倒れた。松島少尉はそこで死んだのだ。
静かな気持ちで出撃した彼にまたもや降りかかった難。離陸できない零戦は「飛べ!飛べ!飛べっ!!」の彼の声も空しく墜落してしまった。無念の最期だった。うさぎ追いしかの山、こぶな釣りしかの川……。ハーモニカを吹くシーンも、聖書を踏むシーンも、張り倒されるアクションのようなシーンも、見事に見せ場を作って盛り上げた高畑の演技力は並みではなかった。
寺川中尉とアニキの100m走の場面では、人の心の中にある愛や友情がジーンと伝わってきた。ステージの同じ場所で走るのだが、抜きつ抜かれつの様子が見事に表現されていた。実はその場で足踏みをバタバタさせて、少しずつ前進することによって、あのように、全力疾走の演技になるのだと聞いた。
また、零戦はイスと机を組み立てただけで、役者は自分のお尻を上下左右に動かして、飛び立つシーンや飛んでいるシーンを作ったのだという。その個所には照明が全く当たっていないので仕掛けが分からないのだ。
高畑と私は2時間もかけて、今井雅之氏や、その他の役者の演じたビデオをいくつか見て、聖書を踏むシーンについて話し合った。今井雅之氏もそのシーンで片足を聖書の上で止めていた。つまり、迷っている表現なのだ。「あの状況の中で、ああいう状態でいるのは不自然だ」と高畑が言い、私もそうだと思った。それは任務遂行と同じように強制されたものであり、そこに人間としての迷いが与えられる余地はなかった、と思う。
- 改めて、戦争というある種の極限状態が、人の肉体のみならず精神までをも殺戮する怪物なのだと感じます。平和で、平穏無事な生活というのは、なんの努力も注意も払わずに、自然に与えられるものではないと、再認識しています。兵士や国民の死や苦しみ・悲しみには無感覚に私利・我欲を押し通そうとする現代の怪物は、まだどこにでも存在するのだと思っています。 -- 昼寝ネコ 2014-07-25 (金) 16:54:21
- 高畑洋介さま
あの芝居には確かに英霊が降っていると感じました。
私は軍国少女ならぬ軍国幼児でした。今でも軍歌を聴くと何とも言えない悲愴な郷愁に襲われます。「後に続いてくれ」と特攻隊員は言い残して飛びたったそうです。後に続いて本土と国民を守ってくれ、と。
戦後の教育の中には国防がありませんでした。第二次世界大戦日本人戦没者310万人
アジア太平洋戦没者1000万人の屍の上に築いてきた平和を守らなければ「後に続いた」とは言えないでしょう。人生最終章に当って国防について学び始めました。 -- 岸野みさを 2014-07-25 (金) 20:42:42 - 昼寝ネコさま
何についても、圧倒的な正確な情報量と知識を持つ者とそうでない者の違いは歴然です。
そうでない者にも諦めないで配信を続けて下さい。 -- 岸野みさを 2014-07-25 (金) 21:47:19 - ありさ姉妹のご主人は役者が本業なのですか。知りませんでした。素晴らしい演技を私も観たかったです。演劇の舞台は一度も観たことがないですが、その迫力と熱気が伝わってきました。 -- 加納敏江 2014-08-01 (金) 11:28:24
- 加納敏江さま
彼は天性の役者です。演じているときは素とは異なる別人になり、生き生きとしています。その道を進めなくて残念に思いますが…。高尾ワードのクリスマス会の劇の指導やステークのミュージカルの指導やモンソン大管長が好まれておられるとお話しされたソートン・ワイルダーの「わが町」の主役は見事でした。屋根の上で恋人たちが語り合うのですが、その屋根は舞台に立てかけてある梯子の上なのでヒヤヒヤしながら見たことを思い出します。 -- 岸野みさを 2014-08-01 (金) 12:30:23