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14092002徳沢愛子

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2014.09.20 詩・散文「かさだかであるようなないような日常」 投稿者:徳沢 愛子

金沢弁方言替え歌アメイジンググレイス(雨いーじぃー)
 
かさだかであるようなないような日常
 
 
投稿者:徳沢 愛子

あんさ(長男)おじま(次男)こっぱおじ(三男)
椀たたき(四男)皿ねぶり(五男)
ひと束にして
がっぱになって(一生懸命)育ててきた
今はだあれもおらんがになって
思い出という菓子袋片手に
夕食後 ポリポリつまんでいる

今日はあてがいに(いい加減に)生きてしもた
夜さり 眠りを邪魔する心が
   
かがかが(目が輝く)になった
まっ暗な中で金木犀が匂うている

こわろが(子童)あだけている(騒いで)
友だちがうれしいと あだけている
春風の中の桜のようだ

いしな(石)を拾うて渾身で川面に投げた
いしなは三段飛びして黙って沈んだ
いしなは三回飛沫といっしょに光った

運動会でげべた(最後)になった
うつむいて席に戻ってきたら
地べたにへばりついて咲いている
たんぽぽとパピポ目が合うた

たんち(幼子)にこちょこちょしたら
こそがしがって(くすぐったい)身ぃ捩じり
顎あげ笑うた
わて(私)もつられて笑うたら
心の囲いが成層圏へ飛んでった

坊やがかさだか(おおげさ)に泣き喚いている
子だくさんの母ちゃんは夕餉の仕度
窓から入ってきた夕焼けが
坊やのバタ足で
がんこ(ものすごく)に叩かれている

この世にちゃがちゃが(無茶苦茶)にされても
ひとりぽっちになっても

神様さえおそばに居て下されりぁ
いんぎらぁ(ゆったり)と日暮しできる
野菜の花みたいに

きのどくなぁ(恐縮です)もったいなや
じまんたらしい(偉そうな)ことも言わず
母ちゃんは母ちゃんらしく
畑に這いつくばって生きた
赤いべーこ(着物)より野良着が美しかった

「ちんと(じっと)しとろ(していなさい)」「ちゃんとしとろ」
母ちゃんの口癖やった
見上げるような人生の壁の前で
今、かすかに聞こえてくる
懐しい声音(こわね)
 
 
 

  • その地方独自の言葉を大切にする気持ちは、貴重だと思います。私は、ご縁があって津軽方言と気仙方言で文章をお願いした経緯がありますが、なかなかいいものですね。 -- 昼寝ネコ 2014-09-20 (土) 23:57:56
  • 徳沢愛子さま
    いいもんあたったうぇい。
    あんやと存じみす。
    いんぎらぁっと
    おんぼらぁっと、読んどるけん。
    この金沢弁の使い方正しいですか?
    昭和の母ちゃんのたくましさが、金沢弁によって更に、味わい深いインパクトを
    読者に訴えかけます。
    「神様さえおそばに居て下されりぁ」
    素朴で唯一の願いなのですね。 -- 岸野みさを 2014-09-21 (日) 17:12:30

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