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14121001昼寝ネコ

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2014.12.10 エッセイ「可能性を秘めた小さな男の子たち」投稿者:昼寝ネコ

 
クリスマスの小さな夕べを思い浮かべている。

夜になると、駅前の通り沿いに青白く光る樹木がきれいだ。
無数の小さな電球に飾り付けられ、しばし目を奪われる。

ふと、ある家族のことが思い浮かんだ。
家庭内暴力が原因で離婚し、お母さんが一人で
小さな男の子二人を育てている。

お兄ちゃんが暴力の対象になっていたらしく
すっかえり心を閉ざしてしまっている。
まるで心の中から感情が消え失せてしまったような、
固い表情が今でも記憶に残っている。

クリスマスの時期には、街並みが新たな生命を
吹き込まれたかのように、表情を変える。
底冷えのする季節に、クリスマスツリーを飾り
プレゼントや温かい食べ物を囲んで
家族の明るい表情が弾んでいる。
どこの家にもありそうな、そんな光景の向こう側に
ひっそりと過ごす家族が目に浮かぶ。

サンタクロースが運んでくるプレゼントは
彼らの家を素通りするのだろうか。
それとも笑い声が部屋中に響くのだろうか。

10年後、20年後の男の子を想像してみた。
今の年齢で理解することは難しいかも知れないが
無事に成人し、社会人になり、やがて結婚して
自分自身の家族を持ったとき。
そして過ぎ去りしクリスマスの時期を思い出したとき、
彼の心には何が残っているだろうか。

本や暖かいセーターもいいだろう。
特大のクリスマスケーキもいいかもしれない。
でもなぜか、彼の心の中に残る何かを
プレゼントしてあげたいと思うようになった。

そうだ。
北極圏にほど近い北欧に、サンタクロースを養成する
子どものための学校があったことを思い出した。
あのストーリーは大人向けに書いたのだが、
設定を子ども向けにアレンジし、彼の名前を登場させて
読み聞かせてやろうではないか。
そして、中綴じの簡単な小冊子をちゃんと製本して作り、
クリスマスプレゼントとして、家族3人に手渡そう、
そんな考えが思い浮かんだ。

物語の中に自分の名前があると、子どもはとても反応する。
読み聞かせの先生が、
そのようにいっていたのを思いだした。

もしかしたら、退屈そうな表情で聴くかもしれない。
意味だって、ちゃんと理解してくれないかもしれない。
でもいつか、20年後か30年後の彼が、自分だけのために
物語を作り、製本までしてくれた大人たちがいたと、
そんな光景を、ふと思い出してくれるだけでも
十分なのではないだろうか。

小さな子どもの可能性は、ある意味でとても大きい。
しかし、周りの大人たちの接し方ひとつで
あっという間にしぼんでしまうのも、残念ながら
事実だろうと思う。

たとえ僅かな時間でも、小さな出来事でも
いつか思い出して心を開くきっかけになってくれれば、
それだけで嬉しく思う。

まるで世の中から忘れ去られたような小さな存在を
視野の中に入れ、心に思い浮かんだことを行動に移す。
それがクリスマスの精神の本質なのではないかと
ふと思っている。

ピアソラも、このChiquilin de Bachinを作曲したときは
親も家も失った境遇の子どもたちを、
心の中で思い描いていたのだろうと思う。
 
 

  • 昼寝ネコさま
    今年のクリスマスの素敵な贈り物ですね。きっと歓ばれ感謝されることでしょう。たとえ
    その気持ちをすぐに表現することが出来なくても…。 -- パシリーヌ 2014-12-10 (水) 20:54:01
  • パシリーヌさん
    頭のいい子らしいので、いろいろ感じて少しでも心を開いてくれるといいなと思っています。 -- 昼寝ネコ 2014-12-10 (水) 23:59:40

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