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2016.11.04 穀粒記者レポート・「絶滅危惧種―海鳥冠海すずめ(カンムリウミスズメ)」投稿者:岸野みさを

2016年7月22日 日本野鳥の会は、国の天然記念物で絶滅危惧種の海鳥・カンムリウミスズメを、 人工的に作った巣を使って世界で初めて繁殖させることに成功したと発表した。伊豆半島沖の神子元島で今年、少なくとも5羽のひなが巣立った。日本近海にすむ体長22~26㎝の小さな海鳥で、生息数は推定5000~1万羽。敵が少ない無人島に巣を構えるが、マリンレジャーで来た人々の放置ゴミを目当てに飛来したカラスに食べられるなどし、数が減っている。カラスから身を守りやすいよう人工巣は入口を狭く、奥行きを深くするなど改良を重ね、今回は3つの人工巣で繁殖にこぎ着けたという。同会は「これからも巣を改良し、生息数の増加を図っていきたい」と意気込んでいる。(産経新聞より転載)

 嬉しいニュースだ。以前、TVの大自然ロマン水紀行で冠海すずめの番組をみて記録しておいたのを思い出した。

宮崎県の無人島、枇榔(ビロウ)島に年一度産卵の為にやってくる冠海すずめはハヤブサを避けて夜、島に登るのだが、飛ぶのが苦手、歩くのも上手ではない不思議な鳥だ。岩の裂け目で産卵し、雌雄交替で30日間抱卵し、ヒナがふ化するといきなり置き去りにして海に舞い戻り、ヒナを呼びつけるのだ。それもハヤブサに狙われない夜に暗い海で鳴きつづける。ヨチヨチ歩きもままならないヒナは親の後を追って、なんと50mの断崖を転げ落ちる。何回も何回も岩にバウンドして、崖の窪みに落ちて登ろうにも登れず、力つきてジーっとしてしまったヒナもいる。しばらくして暗い波間から聞こえる親鳥の鳴き声に再び崖をよじ登って、やっと海に面したところにたどり着くも、荒れる大波にひるみ、また転げ落ちる。波間に翻弄され親鳥の鳴き声を捜す。断崖でカニに岩の隙間に引き込まれたヒナもいる。暗い海の中で親鳥の声を探し当てて、やっと両親に会えた二羽のヒナだったが、一羽は波間にはぐれてしまった。

 夜明け前に沖に出なければハヤブサに襲われる。取材班がはぐれたヒナを捜して島の裏側に船を進めると、親鳥と一羽のヒナも島の裏側に泳いで行って、はぐれたヒナを捜していた。その間1時間半。夜明けが近づいてきて三羽は沖の方に泳ぎ始めた。諦めたのだ。しばらく波間を泳ぎながら親鳥はヒナにエサを口移しで与え、ヒナも水面にもぐったりしてエサを捜す練習をしていた。沖に生きる冠海すずめはそこからどこへ行くのか知られていない。

 「冠海すずめはこういう鳥ですよ、とまず知ることが保護につながる」と専門家の研究者は言う。


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