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18110201徳沢愛子

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2018.11.02 詩・散文「君に」 投稿者:徳沢 愛子

今はもう働いてはいけない
今しばらく 息をひそめて
そこに横たわっていて下さい
万年筆をそこに置いて下さい
この一ケ月の猛暑 若者だって
酸素不足の金魚のようになっています
まして君は
沈黙の臓器が悲鳴をあげています
無茶苦茶働いて
八方にいい顔しようとする
本末転倒です
肉体は神の宿る聖なる宮居
その肉体の管理人である君
倒れるまで 書き続けるなんて
ほめられることではない
管理人 失格です
その情熱はたいしたもの
まるで火のついたように
同じ猛暑に対抗しようなんて

大自然と ちっぽけな君
大自然に内包されている君
ちっぽけな君の中にある大自然
呼応しながら 命をつないでいこう
その強張った肉体と
霊をほぐしてあげて下さい
お布団の中で 終日
冥想するのもいいこと
思索の水底に沈んで
寂しさの根っこをのぞき見るのもいいこと
その水を打ったような君の宮居で
水を打ったような健やかな君の霊を
ゆったり座らせてあげて下さい

きっと
涼しい緑の風が吹いてきます

  • 三人称にした独特な観察眼が冴えていると思いました。「酸素不足の金魚のようになっています」「同じ猛暑に対抗しようなんて」とホッとする愛子の世界です。ご投稿ありがとうございました。 -- 岸野みさを 2018-11-04 (日) 12:02:37
  • この詩は、ご主人への思いを表されて書かれたのでしょうか?細かなそれでいてある種複雑な姉妹のお気持ちがとても良く現れていますね。 -- 工藤駿一 2018-11-04 (日) 20:05:22

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