穀粒(こくつぶ)会員のための、創作および出版支援サイト

10040601徳沢愛子

トップページへ 譜面台の練習曲メニューへ

2019.04.06 詩・散文「焔よ 左義長よ」 投稿者:徳沢 愛子

古ぼけちぢれた正月の〆飾り
「夜明け」 と書かれた花子の柔らかさ
「飛翔」 と墨 黒々書かれた太郎の奔流
〆飾りも 夜明けも 飛翔も
高く燃え上がらせて立ち上がる
両手両足華やかに踊らせ
命吹き上がらせるこの時
寒風に声あげ 伝えようとするもの
歴史に洗われた神社の境内

家の囲いの中で心ちびていく者
武者震いし 赤く点火する。
愚痴やら 寂しさ 詮無いことども
燃やし 燃やし 燃やす
その時 心の奥処に聖流を発見する
新しい言葉の飛沫が弾き飛ぶ
金色の滴は八方に放たれる

迫真の踊り手よ!
髪は金色になびき
両手は善いものを掴もうとする
両足はたたらを踏んで どんと跳ねる
ただ今の誰かではないのか

時に小さな石礫つぶてが飛ぶ
あの囲いの中へ戻らねばならぬ
大根の味噌汁を作らねばならぬ
鱗を飛ばして大魚を料りょうらねばならぬ
色褪せてきた魚を慌てて炒めねばならぬ
親しい友に返信せねばならぬ

手をとって励ます者よ
高みへと導く導師よ
小さな魂はあの囲いの中へ勇んで戻る
この寒風を突き抜けて 焔よ

  • 左義長祭りを見たことがありませんが、古い時代からの日本の伝統なのでしょう。燃えあがるしめ飾りや書初めの焔の中に歌人が見ている神秘と「あの囲いの中へ戻らねばならぬ」人々の暮らしが愛おしく、逞しく歌い上げられていると思いました。 -- 岸野みさを 2019-04-07 (日) 21:55:38
  • 素晴らしい感性ですね。激しくたくましく燃え盛る炎の様子が目に浮かびます。その炎の中で燃え消えていく人々の祈りや思いがひとつひとつ昇華されていく、その中で昇華されずにいる人々はあれこれに心を奪われ、祈ったことも思ったこと忘れて、”日常”に埋没していくのです。なぜか私たちは忙しいのです。 -- matsuoka 2019-04-13 (土) 12:20:02

認証コード(2919)

powered by Quick Homepage Maker 5.3
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional