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2017.02.18 自分史・家族史「母へのラブレター 偉かったね」 投稿者:徳沢 愛子

 母はゴッドマザーだった。今、思えば夫に相談もなく家一軒買うなんて、私には信じられない、あの頃は貧乏当たり前、借家暮らしの無い無いのスタートだった。6人の兄弟姉妹の私たちは家庭菜園や、炊事洗濯、子守り、アルバイトなど何でもして、母を助けた。母は父の給料を倹約倹約で、少しずつ貯め、後年株を買い、やがて結構蓄財した。いつ新聞の株式覧を読んで勉強したのだろう。儲けたお金で土地を買い、家を買った。まるで株屋であり、不動産屋であった。父はまじめな会社員であった。染色会社に勤めていたので、家へ帰ってから染色の内職をしていた。日の丸の旗を染めては売るのである。母は夜遅くまで父の手伝いをしていた。いつ眠っているのかわからなかった。弟や妹を出産した時は小学生の姉と私が交替で学校を休み、母の世話をした。今のように病院なんてとんでもない。あの頃はお金もなく、家にお風呂もなく食事も粗末であったが、家中活気と気合が入っていた。家庭菜園では、自家製糞尿をブリキ缶に汲み上げ、兄が自転車の後ろ両脇にぶら下げ、姉と私は跳ね上がる糞尿にキャッキャッ言いながら畑まで伴走した。家族8人総出で働いた。幼い弟や妹は勿論手伝いにはならなかったが、幼い弟妹がいることで、我々
兄姉たちは喜んで働くことができたし、いつも一致していた。
 
 戦争の時金沢が爆撃されるという噂が広まり、小五の兄、小三の姉、小一の私3人で富山の叔父宅に疎開させられたが、邪魔者の我々3人は、土蔵の隅で寝起きし、虫食い米少々と、虫食い大豆の水っぽいお粥をたいて生活した。あれは一か月だったか、二ヵ月だったか記憶も定かではないが、日頃から家の手伝いをよくしていたので幼い我々3人でも何とか暮らしはできた。私は母の厳しい生き方すべてに信頼を寄せていた。子への厳しさは深い考えあってのこと、女らしい、やさしい言葉などはなかったが、必死に働いてその背中を見せること、老親への心からの介護、子を正しく養育しようというその気概には脱帽であった。母の愛は家庭の枠からはみ出て、近隣の人々まで及び、例えば、家賃も入れぬヤーさんには働くようになるまで無料で家を貸し、家の前を通る貧しい老人に話しかけ、家へ入れお茶をもてなし、身寄りのない近所のおばあさんを夫にも相談せず引き取り世話をした。勿論それ以前には夫の両親を最後まで家で看取り、実家の親にも孝行した。

 母のその生き方は今の私の生き方そのものになっている、他人の一人ぽっちのおばあさんを引き取り世話をするほど博愛は到底私には持ち合わせていないが、できるだけ人々に親切にしたいと、私は日々心がけて生きてきた。23年ボランティアの、電話相談員を月一回続け、一方では27年間重度心身障害児10名に国語の勉強を週一回ずつボランティアで教えに出かけていた。5人の私の息子たちには早々に自立精神を養わせ、たくましく育てた。ボランティア活動は五番目の息子が幼稚園に通い始めた時から始めた。こうした生き方はやはり母のお蔭であると思う。
 先日こんな詩を書いた。

偉かったね
誰方の詩だったか
<過ぎ去ってしまってからでないと
それが何であるかわからない何か
それが何であったかわかったときには
もはや失われてしまった何か>

母が亡くなって何年も経つのに
老いた娘たち 姉と私
 偉かったね お母ちゃんは
 孫や子のこと 赤の他人様まで
 仕えることばかり
 働き通し
 美食もせず 美服も着ず
 明日死ぬというのに
 玉ねぎの苗を と呻くなんて

私たち真似できないわね
美食のお箸をせわしく動かしながら
だんだん悲しくなる
 これでいいのかしら
 このままでいいのかしら

何度考えぬいても
偉かったね お母ちゃんは

 さよなら 私のお母ちゃん
 ありがと 私のお母ちゃん 
 

  • 母上はどこでキリストに似た者となったのでしょうか?おそらく前世での学びが凡人とは異なっていたのかもしれません。その娘さんである姉妹は「この親にしてこの娘あり」で
    いつまでも可憐で可愛らしく、主の目から見ても母からみても「よくやった」と褒められるほど、険しくて非凡な道を歩まれましたね。そして、こうして私たちを励まし慰め力づけて下さいます。時がある限り姉妹のミッションが続きますように祈ります。 -- 岸野みさを 2017-02-19 (日) 16:44:28

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