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2022.04.16 詩・散文「空」 投稿者:徳沢 愛子

老人が増えて、空家が増えて、空地 が増え、町は淋しくなった。私の町内 も例外ではない。
先日、近所の空家を壊してできた駐車場に大きな看板が立った。
「空あります」とあった。一瞬「空があるなんて素敵!」と私は思った。 あの冬の青空は、薄暗い冬空に慣れている北陸人の私にはビッグなプレゼン トである。「空」と聞いただけで解放感で背伸びの一つも出るというもの。 ストレスも飛んでいく。あわてない、 あわてない.
看板の読みは、「空(アキ)あります」と読まるのだと殆どネガティブな連想になる。税金と収入はちょぼちょぼなのか。金庫は空っほなのか。 借り手よ、どんとこいという意味なのだ。

般若心経の空は深くて理解し難いのだが、「空」を考えるとマイナスイメージが殆どではないかと思う。空巣、 空腹、空転、空車、空席、空爆、空虚、 空説、空白、空手形、空蝉、空酒、空 地、空言、それに空欠まで。次々淋し い言葉が浮かんでくる。漢字一つとっても幸福感と不幸感がある。空と空のように。

一人の人間の中にも、外面的にも内面的にも矛盾した大局的なものが存在する。善と悪という場面もある。それ もまた人生を面白くしている。面白くというのは、ちょっと語弊があるかも。 だが、その土壌から詩神も目覚めて立ち現れてくるような気がする。

幸福感を多く見つけられる人は、 きっといいお顔をしているに違いない。 詩神に好かれるような女性でありたいものだ。と最近、不幸っぽい私は新年にあたって、しみじみ反省する。

(詩と詩論 笛 2022 4 299号より転載)

  • 「空きあります」は「どんとこい」という面白い意味だったのですね?単に空間ということかと思っていました。ありがとうございました。 -- 岸野 みさを 2022-04-20 (水) 15:47:07

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